17年前、広小路の喫茶店セピアに子犬が一匹舞い込んできた。近所で買われていたこの犬は、何度追い返してもまたくる。店主の木原さんも根負け、とうとう居ついてしまった。
リキと名づけられた子犬はやさしい性格で、すぐに家族の一員になった。愛情をたっぷり受けて堂々たる成犬に。背筋をピンと伸ばし前足を立てて座る姿は、まるでビクターのマスコット犬のようにりりしかった。
大好きだったのは子供たち。散歩コースの若葉幼稚園に行くと、園児たちが駆け寄ってなでたり抱きついたり。されるがままのリキ、とてもうれしそうだった。ドライブにも行きたがった。お父さんが運転する車の助手席に陣取り海や山へ。亡くなる前に行った温泉旅行は、家族の最後の思い出になった。
木原さんは、数年前にも愛犬をなくしている。どうみおくればいいかわからず、そのときは他人に任せて悔いが残った。今回リキを失ったとき娘さんから聞いたのが、isに掲載されたペットの訪問火葬のことだった。
「あの子は、住み慣れた場所で火葬してあげれてよかった。リキは実の子と同じ。遺骨になっても簡単には手放せないんです。」
そう語る木原さんの目には涙がうっすらと。気持ちの整理がついたら、山手の畑のそばにお墓を立ててあげるつもりだ。