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火葬の前 Vol.1

 17年前、広小路の喫茶店セピアに子犬が一匹舞い込んできた。近所で買われていたこの犬は、何度追い返してもまたくる。店主の木原さんも根負け、とうとう居ついてしまった。

 リキと名づけられた子犬はやさしい性格で、すぐに家族の一員になった。愛情をたっぷり受けて堂々たる成犬に。背筋をピンと伸ばし前足を立てて座る姿は、まるでビクターのマスコット犬のようにりりしかった。

 大好きだったのは子供たち。散歩コースの若葉幼稚園に行くと、園児たちが駆け寄ってなでたり抱きついたり。されるがままのリキ、とてもうれしそうだった。ドライブにも行きたがった。お父さんが運転する車の助手席に陣取り海や山へ。亡くなる前に行った温泉旅行は、家族の最後の思い出になった。

 木原さんは、数年前にも愛犬をなくしている。どうみおくればいいかわからず、そのときは他人に任せて悔いが残った。今回リキを失ったとき娘さんから聞いたのが、isに掲載されたペットの訪問火葬のことだった。

「あの子は、住み慣れた場所で火葬してあげれてよかった。リキは実の子と同じ。遺骨になっても簡単には手放せないんです。」

そう語る木原さんの目には涙がうっすらと。気持ちの整理がついたら、山手の畑のそばにお墓を立ててあげるつもりだ。

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火葬の前 Vol.2

 「ふわふわで真っ白、まるでわた菓子みたい」。
知人の家に、のちにミルキーと呼ばれるマルチーズが生まれた。
そのつぶらな瞳にノックアウトされた正岡さん、もらい手は決まっていたが4時間交渉の末、“略奪”して連れ帰った。
 
  多忙な正岡さんは、仕事でクタクタになって帰宅しても、ミルキーとのスキンシップを大切にした。遊んであげてるはずが、逆に自分が癒され心が元気に。母親と二人、ミルキーをはさんで川の字になって寝るのが常だった。

 妹や親戚、友人も食事や散歩を手伝ってくれた。人見知りで内弁慶な甘えん坊を、みんな喜んで世話してくれる。彼の愛らしさが多くの人の心をつかんでいた。
 
 ミルキーは生まれつき体が弱く、持病があった。病院通いが続き、時間と費用がかさんだけれど、「そんなことはきにない。家族なんだから」と正岡さん。病状が重くなるほど、より一層いとおしく、可能な限り手を尽くした。

 今年、夏の暑い日に彼は静かに息を引き取った。泣いてはいられない。isで知ったオアシスに電話すると、防腐処置を的確に指示してくれた。お通夜には、20人をこえるミルキーファンが駆けつけた。とめどない思い出話が何よりの供養になった。

 火葬した遺骨はまだ家に安置したままだ。その一部は、正岡さんのロケットにも。いまだ離れがたい想いが、彼女の胸の中心にある。

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火葬の前 Vol.3

 Oさんが「リュウ」と出会ったのは東村のワールドプラザ。ペットショップで夫と2人、割引の値札がついた大きめの子猫に目が留まる。「耳が立ってたらスコティッシュフィールドじゃないよね。」いつ来ても売れ残っていたその子に情が移って買ってしまった。

おっとりとしたお坊ちゃんなリュウは、独立独歩まったく手がかからない。グルグルのどを鳴らしながら付かず離れず、おおらかな眼差しで新婚夫婦を見つめていた。唯一彼の眼光が鋭くなるのは、大好物の刺身が食卓にのぼったときだ。いつのまにか皿の前にいて、「いつもいちばんおいしいところをチャッカリ持っていった。」

太りはじめたのは、飼って6,7年後。ダイエットが功を奏してスリムに。ところがそのまま減量が止まらない。獣医の先生の診たてでは腹部に深刻な問題があった。

今年の夏、臨月を迎えたOさんは里帰りから久しぶりに島に戻った。そのころにはもう、かなり弱っていたリュウ。玄関でのお迎えに驚いたが、ひざの上で甘える彼にも「私を待っててくれたの?」とびっくりした。急変したのはその夜。夫婦は、一晩中彼をなでてやりながら最後を看取った。

獣医の先生の紹介で、翌朝オアシス号が島に駆けつけた。火葬から拾骨まで心のこもった扱いに、きちんとお別れができたと語るOさん。それから2週間後に無事出産した。「まるで邪魔にならないよう身を引いたみたい。子供はリュウの生まれ変わりにおもえて。」

遺骨は海へ散骨することに。多々羅の海岸から流していると、偶然にも、誰かが鳴らした「しあわせの鐘」が島々に響き渡った。

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火葬の前 Vol.4

 産業道路を渡って織田が浜に出ると、広々と晴れわたる爽快な景色。いつもと変わらぬ海と島と砂浜。「一人で散歩するとね、どうしても思い出すんですよ。ああ、ここをタラと歩いたな、ここも一緒に通ったなって」。

 タラは今から11年前、小川家に迎えられた5匹目のポメラニアン。口鼻が低くて鼻の頭が黒い、愛すべきたぬき顔。口元から垂らした舌が「不二家のペコちゃん」みたいにかわいかった。

 人が大好き。いつもそばにピタリと寄り添い、体をくっつけてくる。言葉をよく聞き分けるお利口さんで、室内でそそうをしたことなどほとんどなかった。そんな優等生も、遠出のときは大はしゃぎ。車窓から顔を出し、風に吹かれて、飽きもせず遠くを眺める。夫婦と歩いた瓶ヶ森や四国カルスト。駐車場から山頂まで、人の手を借りずにの登り下りした。小型犬にしては体力があり、ずっと元気でいてくれると思っていたのに。

 今年の春、お花見の途中でふと帰りたげなしぐさをするタラ。好きなお出かけを楽しめなくなったのが異変の始まりだった。鳴かなくなり、食欲が落ち、急速に衰弱。ゴルフの予定をキャンセルして看病したお盆の深夜、精霊に導かれる用に旅立った。

 小川家の先代たちが眠る裏庭に埋葬したが、焼骨したのはタラが始めて。「火葬すれば埋める場所をとらないし、臭気もないから近隣に迷惑がかからない。タラはオアシスさんに頼めてよかった」と語る小川さん。散歩に出なくなって久しいが、また織田が浜を歩きたくなったら、タラの面影が」あるたぬき顔のポメラニアンを探すつもりだ。

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火葬の前 Vol.5

 いつもの散歩コース、今治港の第三桟橋を回って潮の香りを満喫した帰り道、人通りの少ない曲がり角でそれは起こった。「キキー」というブレーキ音と「キャンキャンキャン」という悲鳴。徐行もせず飛ばしてきた車が、後輪でベルをひいたのだ。リードを持ったAさんの長男は凍りついた。一瞬の出来事だった。

 仕事帰りに瀕死のベルを励まし、病院へ送り出したAさんは、その夜からひたすら祈った。ベルが再び我が家に戻れるよう、またあの愛くるしい笑顔が見られるよう、しんしんと祈り続けた。

 ベルは、ミニチュアダックス(ロングコート)のオス。もともと長女が買って帰ったが、世話をするAさんを母親と慕ってまとわりついた。賢くて忠実、でも自分がイチバンじゃないと気に食わない。Aさんが同時期に飼い始めたラブラドールにかまっていると、嫉妬して吠えたり甘噛みしたりする。意地悪だけど憎めない、「かわいい、ほんとにかわいい」(長女)やんちゃ坊主だった。

 事故から三日目の晩、ベルは静かに呼吸を止めた。享年6才。腰骨が砕けるほどの重篤」にもかかわらず、Aさんの祈りに癒されて眠るように穏やかな最後。彼を囲んで家族みんなが泣いた。

海が見える港で火葬し、緑豊かなペット霊園に埋葬した。すべてオアシスに依頼したのは、パンフレットの案内文にひかれたから。「ペットを飼ったものでないとわからない気持ちがある」。確かにそのとおり心のこもったサービスに、「きちっとくようしてやりたかった」という、切なる思いを果たせた。

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